Q 天台宗の葬儀の流れ
今から1200年ほど前に伝教大師最澄によって開かれた仏教宗派「天台宗」。総本山である比叡山延暦寺は、法然・栄西・親鸞・道元など、後に各宗派の開祖となる僧侶が教えを学んだことでも知られています。
今回は天台宗の歴史や葬儀についてご紹介します。
天台宗の葬儀
天台宗は中国の隋で天台大師智顗(ちぎ)が開いた宗派で、平安時代に遣唐使として唐に渡った最澄がその教えを持ち帰り、日本に広めました。といっても最澄は中国の天台宗をそのまま伝えたわけではなく、禅法(ぜんぽう)、密教(みっきょう)、顕教(けんぎょう)を融合し、日本独自の天台宗を作り上げました。天台宗は全ての人が悟りを開いて仏となり、安楽を得ることができるという教えを説いています。
さまざまな教えを融合した宗派である天台宗の葬儀では、顕教法要、例時作法、密教法要の3つの儀式が行われます。天台宗の葬儀は、故人の魂を迷いや苦しみのない極楽浄土へ送ることを目的として行われます。
天台宗の葬儀の流れ
1 列讃(れっさん)
故人の臨終を告げる四智讃の声明を唱えます。
2 光明供修法(こうみょうくしゅうほう)
阿弥陀如来をお迎えし、故人を仏となすための密教作法を行います。
3 九条錫杖(くじょうしゃくじょう)
錫杖(しゃくじょう:密教の法具)を振りながら声明を唱えます。
4 随法回向(ずいほうえこう )
仏を讃える言葉を述べ、故人の供養を祈ります。
5 列讃(れっさん)
四智讃を唱え、導師が別座に座着します。
6 鎖龕(さがん)起龕(きがん)
棺の蓋を閉じる「鎖龕」の儀式と、棺を起こす「起龕」の儀式を行います。
7 奠湯(てんとう)奠茶(てんちゃ)
霊前にお湯とお茶をお供えします。
8 歎徳(たんどく)
故人の生前の徳を讃えます。
9 引導
菩薩としての心得を唱え、故人の成仏を祈ります。
10 下炬(あこ)
松明または線香で空中に梵字と円を描く下炬の儀式を行い、下炬文を読み上げます。
11 読経
12 焼香
13 総回向
光明真言または念仏を唱えます。回向文を唱えて葬儀が終了します。
天台宗の葬儀における特徴的な儀式
顕教法要(けんきょうほうよう)
法華経を読んで故人の生前の罪を懺悔します。
例時作法(れいじさほう)
「阿弥陀仏」のお経を唱えて、故人が極楽浄土に往生することを祈ります。
密教法要
光明真言(こうみょうしんごん)を読み、指で印を結んで故人を極楽浄土へと導きます。
天台宗の焼香マナー
数珠を左手に持ち、右手親指、人差し指、中指を使って抹香(まっこう)をつまみます。つまんだ抹香を額の高さまで持ち上げてから香炉にくべます。天台宗では焼香の回数を重要視していませんが、3回または1回とされることが一般的です。焼香後は祭壇と遺族に一礼してから自席に戻ります。
天台宗の本式数珠
数珠には宗派ごとの正式な数珠(本式数珠)と宗派に関わらず使用することができる略式数珠があります。本式数珠の多くは108個の主珠が使用されており、宗派によって正式な数珠と認められています。
天台宗の正式数珠は108個の主玉と、4個の天玉、1個の親玉、更に親玉から繋がる紐に連なる30個の弟子玉(でしだま)で構成されています。また、平玉といわれる薄い円形の玉が使われていることが特徴的です。
お参りする際は房を下にした数珠を両手の人差し指と中指の間にかけて、そのまま手を合わせます。
まとめ
・天台宗は中国の隋で天台大師智顗(ちぎ)が開き、遣唐使として唐に渡った最澄がその教えを持ち帰り、日本に広めました。
・天台宗は身分や性別に関わらず全ての人が悟り開き、安楽を得ることができるという教えを説いています。
・天台宗の葬儀では、顕教法要、例時作法、密教法要の3つの儀式が行われます。