Q 真言宗の葬儀の流れ
仏教にはさまざまな宗派があり、宗派によって葬儀の儀礼やマナーは異なります。今回は日蓮宗のお葬式についてご紹介します。
真言宗はどんな宗派?
真言宗は平安時代に空海が開いた仏教宗派です。空海は804年に遣唐使として中国に渡り、密教※1の第一人者に師事しました。空海は当初20年にわたる長期遣唐使として派遣されましたが、結果的には2年という短期間で日本に戻りました。密教の第一人者となった空海は高野山を真言密教の修行の場とし、金剛峯寺を開きました。
真言宗は自らの行いによって浄土に往生することや、悟りを得ることを目指すため、修行を重要視する宗派となっています。
真言宗の葬儀は、故人を「密厳浄土(みつごんじょうど:大日如来がいる浄土)」へ送り届けるために行われます。
※1広く公開されることのない秘密の教義や儀礼を師から弟子に伝える「秘密仏教」の略称
真言宗の焼香マナー
お葬式の際には、抹香をつまんで香炉にくべる「焼香」が行われます。この動作を行う回数は宗派によって異なり、真言宗では基本的に3回行いますが、参列者が多い葬儀では1回に短縮されることがあります。抹香をつまんでから香炉にくべる前に額の高さに持ち上げる「おしいただく」という作法がありますが、真言宗では3回すべておしいただいてから香炉にくべます。
焼香を3回としている理由には諸説ありますが「身業(行動)、口業(言葉)、意業(心)の3業を清める」「仏、法、僧の『三宝』に帰依する」「欲、怒り、迷いの三毒を捨てる」などの意味があるとされています。
真言宗の葬儀【特徴的な儀礼】
一口に仏教と言っても葬儀で行われる儀礼には違いがあります。ここでは真言宗の葬儀で行われる特徴的な儀礼をご紹介します。
灌頂(かんじょう)
仏教における灌頂は、菩薩が悟りを開き仏となる時に、諸仏が菩薩の頭に智水を注いで、菩薩が仏となったことを証明する儀式です。密教では、僧侶が修行を重ねて、上の位に上がる証として行われる儀式でした。
空海が中国で密教の教えを授かった際にこの灌頂が行われたことや、灌頂によって故人が仏の位に上がることを願うことが、真言宗のお葬式で灌頂が行われる所以とされています。
土砂加持(どしゃかじ))
土砂加持は納棺時に行われる儀礼です。本尊の前で光明真言を唱えてから、洗い清めて護摩焚きした土砂をご遺体に振りかけて納棺します。これにより、故人の生前の罪を滅して、良い報いを受けることができるとされています。
灌頂や土砂加持は真言宗の葬儀における特徴的な儀式ですが、現在は全てのお葬式で行われているわけではありません。
真言宗の葬儀【流れ】)
(1)僧侶入堂
故人の体や意識を清めるために以下の儀礼を行います
・塗香(ずこう) 故人の体に香を塗り、穢れを除く
・三密観(さんみつかん) 吽の字を身・口・意におき、五鈷金剛杵(ごここんごうしょ)を観ずる
・護身法 五種の印を結んで真言を唱える
・加持香水(かじこうずい)の法 香水を浄化するために祈る
大日如来をお迎えし、故人を導くことを願うとともに葬儀の成就を祈ります。
・三礼(さんらい) 三礼文を唱える。
・表白(ひょうびゃく) 大日如来へ祈りを捧げる
・神分(じんぶん) 諸仏に感謝し、故人の加護と滅罪を願う。
・声明(しょうみょう) 仏教音楽を流す。
(2)授戒の儀式
故人を大日如来の弟子とするために、僧侶がお経を唱えながら故人の髪を剃ります。故人、遺族、寺院等の意向により、実際に髪を剃る場合と、実際には剃らずに身振りのみを行う場合があります。
三帰三竟(さんきさんきょう)、十善戒、戒名が授けられます。
(3)引導の儀式
故人に自分が亡くなったことを認識させて、あの世へ送り出します。葬儀冒頭で行った表白と神分を再び行った後、灌頂を行い「弥勒三種の印」※を授かります。
※弥勒三種は弥勒菩薩の「姿」「教え」「実行力」を意味します。
(4)墓前作法
故人の煩悩を取り除き、印明と血脈を授けます。
・破地獄の印明 真言や法具を授ける
・金剛界胎蔵秘印明 真言を授ける
・弘法大師による引導の印明 偈文を授ける
・位牌開眼 故人を加持し位牌を開眼する
・血脈授与 真言密教の血脈を授ける
(5)焼香、出棺
成仏を願う諷誦文(ふじゅもん)を唱え、焼香を行います。その後、僧侶が印を結び、指を三度鳴らします。指を鳴らした音で故人は浄土へ向かいます。
・焼香
・導師最極秘印 故人を浄土へ送る
・出棺
まとめ
・真言宗は平安時代に空海が開いた仏教宗派で、自らの行いによって浄土に往生することや、悟りを得ることを目指す宗派です。
・真言宗の葬儀は、故人を「密厳浄土(みつごんじょうど:大日如来がいる浄土)」へ送り届けるために行われます。
・真言宗の葬儀において特徴的な儀礼として灌頂や土砂加持がありますが、現在では真言宗の全ての葬儀で行われるわけではありません。