Q お通夜の夜にロウソクや線香を灯し続ける「寝ずの番」
お通夜の夜、ロウソクや線香の火を絶やさずに守り続ける「寝ずの番」。「なぜ寝ずの番を行うの?」「今でも寝ずの番は行われているの?」といった疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
今回は寝ずの番の成り立ちや、現在の状況などについてご紹介します。
寝ずの番を行う理由とは
寝ずの番を行う理由は諸説あります。ここでは3つの理由をご紹介します。
故人がお腹を空かせないように行う
多くの仏教宗派では、人は亡くなると冥土を旅するとされていて、その間故人の唯一の食べ物は「線香の香り」であると考えられています。故人が空腹で辛い思いをしないように線香の火を灯し続けることが、寝ずの番を行う理由の一つといわれています。
あの世とこの世を結ぶため
仏教では、ロウソクの火には「あの世」と「この世」を結ぶ役割があると考えられています。ロウソクの灯りと線香の煙を道標として、故人が迷うことなくあの世にたどり着くことができるよう、手助けするという意味もあります。
故人の様子を見守るため
現在のように医療が発達していなかった時代は正確な死亡診断が難しく、亡くなったと思われていた人が生きていて、後々意識を取り戻すことがありました。そのような状況だったため、身内や親しい人が一晩中ご遺体の側を離れずに、様子を見守っていたことが考えられます。
※浄土真宗には「往生即成仏」という教えがあり、亡くなった人が旅をすることは無く、すぐに浄土へ迎えられるとされています。そのため宗教儀礼として寝ずの番を行う必要はありませんが、故人様への思いや家庭の風習などで行うこともあるようです。
寝ずの番は今でも行われているの?
一晩中ロウソクと線香の火を絶やさず、故人を見守る寝ずの番ですが、宗教離れが進み医療が発達した現在でも、そのような大変な儀礼が行われているのかと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
大家族が当たり前だった時代や、葬儀に多くの親族が参列していた時代は、交代で寝ずの番を行うことができましたが、少子高齢化・核家族化が進み、葬儀が小規模化した現在では、見守る家族の人数が減り、寝ずの番を行う負担が大きくなっています。また近年では、燃焼時間が長いロウソクや渦巻線香を使って、徹夜することなくロウソクや線香の火を保ち続けることが可能です。
そのような状況のため現在では、全てのご家庭が寝ずの番を行っているわけではなく、ある程度の時間まで見守った後は、お休みになる方も増えています。
寝ずの番は誰がするの?
仏教において、寝ずの番を行うべき人が決まっているわけではありません。ほとんどの場合は故人の配偶者や子ども、お嫁さんやお婿さん、孫など、ごく近しい遺族が行います。場合によっては兄弟や従兄弟などの親族が参加することもあります。地域やご家庭の風習で寝ずの番を行う人が決められている場合は、それに従って行いますが、たいてい一人で夜通し行うわけではなく、複数の人が交代で行います。
寝ずの番を行う際の服装
寝ずの番を行う際の服装マナーは決められていません。通夜式が終わり、一般の参列者が帰宅していることや、朝までその服装で過ごすことを考えると、部屋着やパジャマを着用することが一般的だといえるでしょう。ただし、葬儀の場は非日常であるため、マナーが決められていないからといって何を着ても良いと考える人ばかりではありません。派手な部屋着やパジャマは控えた方が良い場合もあることを覚えておくと良いでしょう。
お葬式終了から四十九日まではどうするの?
浄土真宗以外の仏教宗派では、人が亡くなってから四十九日間は冥土を旅する期間であるとされています。その間故人は、ロウソクの灯りと線香の香りや煙を必要としているため、本来であれば葬儀後四十九日までの間は、それらを絶やさずにおく必要があります。ですが、そのような長期に渡ってロウソクや線香を燃やし続けるとなると、火災が起こる危険性が高まり、ご家族が疲弊することにも繋がります。葬儀後四十九日間、ロウソクと線香の火を灯し続けることは、あまり現実的では無いといえるでしょう。
まとめ
・寝ずの番は、故人がお腹を空かせて辛い思いをすることや、故人が冥土で道に迷うことが無いように行われる儀式です。
・少子高齢化・核家族化が進み、葬儀が小規模化した現在は、寝ずの番を行う負担が大きくなっています。そのため燃焼時間が長いロウソクや渦巻線香を使って、夜は休む方も多くなっています。
・浄土真宗以外の仏教宗派では、人は逝去後四十九日間冥土を旅するとされているため、本来はその間ロウソクと線香の火を灯し続けなければいけませんが、そうすると火災が起こる危険性が高まり、ご家族が疲弊することにも繋がります。四十九日間ロウソクと線香の火を灯し続けることは、現実的には難しいといえるでしょう。